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2008年11月22日 (土)

骨髄移植 2.前処置

造血幹細胞移植の前処置

骨髄移植に際しては、一般に前もって患者の骨髄造血機能を破壊するため及び腫瘍細胞の破壊のために、強力な前処置が施される。具体的な方法は、抗ガン剤の大量投与、そしてしばしば放射線の全身照射が併用される。ただしミニ移植では、移植後のGVL効果による治癒を目的としているので、骨髄造血作用非破壊性の比較的軽い前処置が施される。
以下、同種移植、自家移植、ミニ移植の順に、一般的な前処置について見てみる。

1.同種移植
1-1 各種抗ガン剤
代表的抗ガン剤としては、シクロホスファミド、ブスルファンがあるが、そのほかにシタラビン、エトポシド、カルボプラチン、チオテバ、メルファランなどが用いられる場合もある。

1)シクロホスファミド(CY)
免疫抑制と抗腫瘍効果の両方の性質を持つ。
【使用量】
通常は60mg / kg体重 / 日×2日間。 1回2~4時間をかけ静脈点滴する。
【副作用】
①出血性膀胱炎
対策は
・水分を経口または点滴で十分に補給する。
・膀胱灌流を行う。
などがある。
②心毒性
投与量が早すぎると心不全(鬱血性心不全、心嚢液貯留)を招く。
心電図モニターを装着し、異常をいち早く察知する必要がある。
いったん心不全を発症すると予後不良の場合が多く、細心の注意が必要。
③そのほか
嘔吐、粘膜障害など

2)ブスルファン(BU)
抗腫瘍効果を主作用とする。内服薬である。
【使用量】
内服。通常1mg / kg を1日4回、4日間内服する。
【副作用】
①嘔吐
服用後0.5時間以内に嘔吐した場合は、再服用。
②肝障害
VOD(肝中心静脈閉塞症)。ブスルファンの血中濃度が高いと、VODの発症を来す。
③中枢神経毒性
ブスルファンの髄液中濃度が上昇すると、痙攣を引き起こす。
対策としては、予防薬として抗痙攣剤を投与する。
④ 肺毒性
移植後晩期に間質性肺炎を発症するとの報告がある。

3)シタラビン(キロサイド)(AraC)
抗腫瘍効果を主作用とする。
【使用方法・使用量】
骨髄移植では、抗腫瘍効果を高めるために、他の抗ガン剤に併用して用いられる場合がある。使用量は併用方法によって異なる。投与時間依存性が強いので、注意する。
【副作用】
①嘔吐
強い嘔吐感がある。
②中枢神経毒性
髄液中に浸透し、脳障害を起こすことがある。高齢者は注意。
③肺毒性
大量投与時、肺の急性呼吸窮迫症候群を起こす場合がある。予後不良。
④シタラビン症候群
発熱、皮疹、筋肉痛:緩和にはブレドニゾロンが有効。
⑤結膜炎

4)エトポシド
抗腫瘍効果を主作用とする。
【使用方法・使用量】
骨髄移植では、抗腫瘍効果を高めるために、他の抗ガン剤に併用して用いられる場合がある。特に第二寛解期以降の急性リンパ性白血病では、しばしば用いられる。使用量は併用方法によって異なる。溶解度が低いので、0.4mg / ml以下に希釈して点滴投与する。
【副作用】
1)発熱・低血圧
2)粘膜障害
3)二次性白血病

1-2 放射線全身照射(TBI)
化学療法(主にシクロホスアミド)と併用して放射線全身照射が実施される場合がある。これはレシピエントの造血機能を完全に破壊するために行われる。患者の造血機能が残っていると、正着不全や再発の危険性があるためである。

【使用方法】
放射線の総照射量は10~12グレイ程度。一度に照射するときつすぎるので、何回かに分けて行う(通常4~6回に分割)。回数や一回あたりの照射時間、照射強度、照射方法(体勢、照射方向)は病院によって異なる。眼球や肺は放射線が当たりすぎると悪影響があるので、マスキングが行われる。
【副作用】
まず脳圧上昇・嘔吐(放射線酔い)・発熱・唾液分泌障害等が起こる。
引き続いて粘膜障害、下痢、放射線やけど(紅斑、色素沈着)、脱毛などが起こる。
また、場合によっては、間質性肺炎、肝中心静脈閉塞症(VOD)、血栓性微小血管障害(TMA)、さらには晩期障害として白内障、不妊、二次性ガン、脳症、甲状腺異常、成長ホルモン異常を引き起こすことがある。特に不妊は起こりやすい。また小児では成長ホルモン異常により、成長障害を起こしやすい。

1-3 前処置の実際
主にシクロフォスアミド+放射線全身照射(CY+TBI)とブスルファン+シクロフォスアミド(BU+CY)の二種類がある。

1)シクロフォスアミド+放射線全身照射(CY+TBI)
CYは造血機能の破壊と白血病細胞を叩く効果がある。TBIは造血機能の破壊を目的とする。両者を併用することにより、免疫抑制(造血機能を破壊してドナー造血幹細胞の生着を確実にする)を徹底させる。

CYは、一日、体重1kg辺り60mgを二日間投与する。TBIの代表的な照射量は、総量12グレイ(gray, 記号:Gy)。数日に分けて照射します。分割回数や照射方法は、病院によって異なります。

この前処置の障害には、消化器炎症、粘膜障害、皮膚炎症、肝臓障害、場合によっては出血性膀胱炎、心筋症、肝中心静脈閉塞(VOD)、間質性肺炎などがあるが、詳細ついては後述する。

なお、病状によっては、腫瘍効果を強めるために、この方法にシタラビン(AraC)、エトポシド(ETP)などが併用される場合がある。
また、第二寛解期以降の急性リンパ性白血病では、シクロフォスアミドの代わりにエトポシドが用いられる場合がある。

2)ブスルファン+シクロフォスアミド(BU+CY)
放射線を用いない方法である。
*過去に胸部に多量の放射線を照射している場合。
*放射線全身照射の設備のない病院で移植を行う場合。
*小児の骨髄移植で、成長障害を避けたい場合。
などに適用可能である。

ブスルファンは内服薬であり、通常1mg / kg を1日4回、4日間服用する。
シクロフォスアミドは、考案当初は50mg/kg/day×4日間であったが、副作用低減のため現在では、60mg/kg/day×2日間が標準となっている。ブスルファンの痙攣予防剤としてフェニトインが予防投薬される。

3)シクロフォスアミド+放射線全身照射(CY+TBI)とブスルファン+シクロフォスアミド(BU+CY)の比較

両者の治癒成績に大きな差はないと思われる。ブスルファン+シクロフォスアミド(BU+CY)法は、若干VOD(肝中心静脈閉塞)が多いとされる。またリンパ性腫瘍の場合は、BUよりもTBIの方が、効果に優れている。

2.自家移植
免疫抑制効果の必要はないので、前処置はもっぱら抗腫瘍効果に主眼が置かれる。また前処置方法は適応疾患別に決められている。
自家移植には本人の末梢血幹細胞が用いられるが、その採取は、化学療法のインターバルの間に行われる。

1)急性骨髄性白血病
二回の地固め療法のあいだに末梢血を採取する。
前処置抗ガン剤としては、ブスルファン(BU)、エトポシド(ETP)、シタラビン((AraC)(キロサイド))、メルファラン(MEL)などが組み合わせて用いられる。

2)非ホジキンリンパ腫
寛解期の患者に適用されることが多い。
前処置抗ガン剤としては、各種抗ガン剤併用法とTBI-抗ガン剤併用法がある。
各種抗ガン剤併用法では、BEA(ブスルファン-エトポシド-シタラビン)、CBV(シクロフォスアミド-カルムスチン-エトポシド)その他、多剤併用法がある。

3)多発性骨髄腫
メルファラン(MEL)が単独で用いられる。

3.ミニ移植
通常の同種移植の前処置は、強力なため、高齢者や臓器に障害を持つ患者には、重篤な影響を及ぼす場合がある。
一方、これまでの移植例から、正着したドナーの骨髄(造血幹細胞)が、残存する白血病細胞を叩く、いわゆるGVL効果(graft versus leukemia effect)があることが分かってきました。
そこで、先のような患者においては、強力な骨髄破壊処置を行わず、ドナー骨髄の正着に主眼を置いた前処置を実施する方法が行われるようになってきた。
抗ガン剤としては、抗腫瘍効果が強くなく、免疫抑制効果の強いものが選ばれる。
ミニ移植で用いられる代表的な抗ガン剤としては、フルダラビン(Flu)があるが、体力が許す限りにおいては、抗腫瘍効果のある抗ガン剤の使用(含併用)が望ましい。
患者の状態や、ドナーとのマッチング程度などを考慮して、慎重に前処置方法が選択される。
なお近年では、臓器障害がない場合は、一般に55歳までは、通常の前処置が可能とされている。

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